無炭酸サイダー
ガコンッと音を立ててペットボトルのサイダーが自動販売機の中で1度跳ねた。
うちがちっちゃい時、自販機の仕組みがわからへんくて不思議に思い、どうなってるんかな? なんてほんのちょっと胸をどきどきとさせていた。
あの頃からはこれでも成長して、そんな夢みたいなことを考えるんは減ったと思うし、ただ単に落ちる音やって考えてる。
せやけど、昔とは違う理由で。うちはこの音がするたび心臓が自分の中にある想いを主張するみたいに、ガコンと音がするみたいや。
「ほら、水瀬」
「うわっ」
放り投げられたサイダーがうちの手の中で、2度3度と宙を舞う。
なんとか掌で包みこみ、うちは怒った顔を作って投げた張本人を睨みつけた。
「ちょっと、投げんといてや!」
「うるせぇよ」
「なんやねんその態度。うちに負けたくせして偉っそうに」
うるせぇ、ともう1度言葉を重ねられる。
ふて腐れたように唇を尖らせる仕草が可愛くて、怒りはかんたんに薄れてまう。
単純やなぁ、って自分でも思うけど、しゃーない。可愛いは正義や。
「今回の英語のリスニングさえミスらんかったら、俺の方がいい点やったはずやってんぞ」
「でもミスったんやんね」
「……くそ」