無炭酸サイダー
隣でプシュッというペットボトルを蓋を開ける音がした。
うちも真似て、サイダーを口にした。
悔しげに顔を背けたままのこいつ……上牧(かんまき)は、うちのクラスメート。しかも3年連続の腐れ縁。
高1の時に自販機で落とした小銭を拾ってもらって以来、なんとなく話すようになって。
そんで気がついたら普段は別の友だちとおっても、なんだかんだ誰よりも仲のいい友だち、なんてポジションに収まっとった。
これがなかなかに居心地がよくてなぁ。
球技大会、文化祭、修学旅行とイベントがあれば一緒になんやかんやして、絆を深めてきた。
試験のたびに総合点を競った。
負けた方が勝った方にジュースを1本奢るというルールで何度も、何度もうちらはしゅわしゅわと弾けるサイダーを口にしてきた。
口の中でぱちぱちと弾ける気泡が甘いだけやない。
爽やかで、飲めば幸せになれたんや。
それは、サイダーだけが理由やなくて、うちが上牧のことを……好きやったから。
でも友だちって関係は、ええところもあるけど、悪いところもある。
2年とちょっと、そばにおった。それもずっと、ずっと。
せやけどうちらの関係は少しも変わらへんかった。
どれだけ想ったって、上牧はうちの気持ちに気づくことはなかった。
それにもう、うちらは受験生で、今は高校最後の夏。
進路を決めて、勉強して、大学生になるための準備期間。
あいつのそばからおらんくなる、そのための準備をしてるんや。