無炭酸サイダー
「お前まじで言うてんのか⁈ 女子大⁈」
「いや驚きすぎやろ! 似合わへん言うたらしばくからな!」
「そうやなくて、そんなところ行かれたら俺おんなじ大学行かれへんやん!」
思わずうちまでサイダーを落としそうになった。
指先に力を入れて、ぎゅっと冷たいそれを握り締める。
「……なに、言うてんの。そんな理由で大学決めるなんて……」
「それはそうやけど、でも絶対俺ら一緒やったらめっちゃ楽しいで!」
どこまでも無邪気であほらしい言葉。
うちやったら言えへんことばっかし上牧は言う。
……そんな上牧やから、うちは好きなんや。
「なに、うちと離れるんさみしいん?」
「そらな。さみしいに決まってるやん」
うちにさっきまでの勢いはなくなって、でも半笑いみたいな中途半端な笑みが口元でふよふよと浮かぶ。
でもけろっと答えられた上牧の期待以上の言葉に、うちはもう完敗。
なぁ、上牧、あんたの勝ちやわ。
「せやのにお前、さみしくないんか! うわ〜薄情やな〜!」
わざとらしく声を上げる上牧に向かって、あははと声を上げた。
ひょいっとサイダーを拾って、上牧に放る。
「ううん、うちかてさみしいよ!」
うちは、顔をくしゃくしゃにして笑った。
誰がどう見てもブサイクやけど、なんの問題があるん?
だって嬉しい、幸せ、〜〜ああもうそんな言葉じゃ足りへんって!
表面上の見た目なんて取り繕えへんくらい、うちは今心がおなかいっぱい、みたいにぎゅーぎゅーに満たされたんやもん。