無炭酸サイダー




「お前まじで言うてんのか⁈ 女子大⁈」

「いや驚きすぎやろ! 似合わへん言うたらしばくからな!」

「そうやなくて、そんなところ行かれたら俺おんなじ大学行かれへんやん!」



思わずうちまでサイダーを落としそうになった。

指先に力を入れて、ぎゅっと冷たいそれを握り締める。



「……なに、言うてんの。そんな理由で大学決めるなんて……」

「それはそうやけど、でも絶対俺ら一緒やったらめっちゃ楽しいで!」



どこまでも無邪気であほらしい言葉。

うちやったら言えへんことばっかし上牧は言う。

……そんな上牧やから、うちは好きなんや。



「なに、うちと離れるんさみしいん?」

「そらな。さみしいに決まってるやん」



うちにさっきまでの勢いはなくなって、でも半笑いみたいな中途半端な笑みが口元でふよふよと浮かぶ。

でもけろっと答えられた上牧の期待以上の言葉に、うちはもう完敗。

なぁ、上牧、あんたの勝ちやわ。



「せやのにお前、さみしくないんか! うわ〜薄情やな〜!」



わざとらしく声を上げる上牧に向かって、あははと声を上げた。

ひょいっとサイダーを拾って、上牧に放る。



「ううん、うちかてさみしいよ!」



うちは、顔をくしゃくしゃにして笑った。



誰がどう見てもブサイクやけど、なんの問題があるん?

だって嬉しい、幸せ、〜〜ああもうそんな言葉じゃ足りへんって!

表面上の見た目なんて取り繕えへんくらい、うちは今心がおなかいっぱい、みたいにぎゅーぎゅーに満たされたんやもん。






< 5 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop