キミと初恋。
カバンの泥を捨てきった後、先輩は私のカバンを持って近くにある水道へと向かう。


「これ、一回水流した方がいいと思うけど、いいか?」

「あっ、私やります!」


私の言葉を聞かず、先輩はホースでカバンの中をすすぎ始めた。

私がやるって言ってるのになぁ。なんて思いながら、カバンを洗ってくれる先輩に傘を差した。


「バーカ、お前濡れるだろ」

「私はもうすでに濡れてますから。それと、バカは余計です」

「ははっ。俺だってもう濡れてるからいらねーよ」


先輩が優しいのは、罪の意識だろうって事は分かってる。だからこの笑顔にもときめいたりなんてしない。してあげない。


「先輩、アイス食べたいです」

「よし、買いに行くか」


そうは言ったものの、先輩から引き取ったカバン。私達以上にビチョビチョになったこれをどうしたものか……そう思って、私は首を傾げて考えた。


「このカバン、どうやって持って帰りましょうかね」


このまま教室に置いて帰ってもいいけど、また明日も同じことされたら厄介だしな。


「教室にあるゴミ袋に入れて持って帰るか」

「あっ、それいいですね。そうします」


そう言って私達は校舎に向かって歩き出した。

今日は雨だし、花壇はまた明日綺麗にし直そう。今度はトゲのある花か、素手で触るとかぶれるような植木でも植えてやればいい。

さっきまで悲しくて無気力にも沈んだ気分だったのに、先輩の後ろを追いかけながらそんな事を考える自分が不思議だった。

むくむくと元気が湧いてくるのを感じて、先輩はやっぱりヒーローなんだな、なんてバカバカしいことを考えていた。


ヒーローの隣はヒロインのもの。


だけど、ヒーローとはヒロインだけのものじゃなく、みんなのヒーローでもあるんだ。


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