キミと初恋。
お姉ちゃん、一瞬だけ戸惑ったような表情をして、口がまごついてた。


『高校……楽しい?』


高校って言った後、本当は“楽しい”? って聞くつもりじゃなかったと思う。

それは唇の動きを見れば一目瞭然だった。

お姉ちゃんは間違いなく痩せた。

東京に上京してからこの一年間、ほとんど会えなかったけど、会う度痩せてる気がする。

きっと仕事が忙しいのもあるだろうし、ダイエットしなくちゃいけないのも嘘じゃないとは思う。

でも、一番の理由はきっとーー先輩のせいだ。



『高校……颯ちゃんと一緒なんだね』



きっと、そんな風に聞きたかったんじゃないだろうか。


青井颯太。

お姉ちゃんが一年前まで付き合っていた相手は、私に友達役なんて無茶振りをしてきた青井先輩。

そして、青井先輩があんな風になってしまった原因は私の姉、風花のせいだ。


ヒーローにはヒロイン。


先輩のヒロインには、私のお姉ちゃん以外にいないと思う。

それは逆も然りで、お姉ちゃんのヒーローはきっと先輩だけなんだ。


ヒーローの隣にはヒロイン。それはごく当たり前のポジションで、当たり前だからこそ、そこが破綻してしまうと物事はおかしくなってしまう。


先輩が遊び人になってしまったように。

そして、私のお姉ちゃんがどこか元気なく痩せ細っていくように。


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