キミと初恋。
スーパーに行って卵と私が好きなアイスを買って帰る、そんな帰り道。

私はとても満足だった。たったそれだけなのに、私はとても充実していた。

お姉ちゃんは私の中でパーフェクトな存在。優しいし、頼りになるし、顔良し頭良し、気立てだって良い。

どこに出しても恥ずかしくない人、それが私の姉だ。


私の自慢の姉。だから今週末はお姉ちゃんと一緒にいるために予定を空けてる。

たとえお姉ちゃんが家にいるというのなら、私も一緒に家からは一歩も出ない。映画を観るというのなら、私も隣で鑑賞する。

ご飯を外で食べたいというのなら、私もついて行く。


「お姉ちゃん」

「お姉ちゃんが将来結婚する人は、私が審査するからね。いくら相手が芸能人だとしても、変な虫かどうかはちゃんと見極めてあげるからね」

「あははっ、審査って、なんだかオーデイションみたいだね。かすみの審査は厳しそうだなぁ」


厳しいに決まってる。お姉ちゃんみたいな綺麗な花には、優美な蝶だけじゃなく、変な虫がたくさん寄ってきちゃうんだから。


「そうだよ。オーデイションするんだからね。私の審査は厳しいよ」


フンっ、と鼻を鳴らしながら買い物袋を持つ手に力を込めた。


「でも、かすみ……颯ちゃんの時は何も言わなかったよね」


お姉ちゃんは少し俯きがちに小さく微笑んだ。

その笑みは夕日に照らされ赤く染まる。なのに、それは情熱とか暖かさとかとは正反対の感情がそこには浮き上がっていた。

しまった、って思った時にはもう遅い。お姉ちゃんの中にはまだ、青井先輩が存在している。

それはきっとこの赤く焼ける空と同じように、色褪せる事はないんだと思った。


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