キミと初恋。
人がどーでもいいことを考えながらこの場をやり過ごそうとしているというのに、教室内はまたザワザワと騒ぎ始めた。

今朝クラスに着いた時のざわつきったらなかった。

昨日の情報を知らなかったクラスメイトも、さすがに今朝には耳に入ったようで、私の周りはとても騒がしかった。

けど、今回はそれ以上。


なんだ?と思って伏せた顔を上げようとしたその時ーー。



「おーい、斉藤ー。お客だぞー」



クラスメイトの男子が教室の入り口から私の名を呼んだ。

その声に反応して、声のする方を見やった瞬間ーー私の背筋は凍りついた。


「青井、先輩……」


私の事を呼んだ男子は、どこか楽しそう。きっと、ひと波乱でも待っているのだろう。

なんてこった……。

私の心の中は荒れ狂う波に稲光が落ち、その雷撃に私の心臓は死にかけ寸前だった。


「……呼び出し食らった女子はかすみが初めてかもよ。しししっ」


しししっ、じゃないし。

りょうちんはそう耳打ちした後、さっさと私の席を離れていった。


ああ、神様。
どうか御慈悲をーー。


そう神に祈りを捧げながら、私を呼び出した青井先輩の元へ足を引きずりながら向かった。


足がもつれて上手く歩けない。

こんな少しの距離なのに、なかなかたどり着けない。

まるでドロ沼に足を取られてるみたいだ。

もし本当にこの教室の床がドロ沼なのならば、どうか底なし沼でありますように。

そしたら、そのまま沈んで消えてしまいたい……。


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