キミと初恋。
私が口ごもっていると、先輩はひとつため息をついた。


「なら、付き合ってやってもいいぜ」


そう言った先輩は、どこか呆れたような表情で私を見ている。



ツキアッテヤッテモイイーー。



私は思わず拳を握りしめた。

色んな感情とか、想いが、私の心を大きく揺さぶって、それを抑えようと必死になって戦った。


「……ふ、ざけないでよ」


昨日は思わず先輩を殴ってしまったけど、空手有段者は人に向けて放ってはいけない。

感情もセーブ出来なければ一人前とも言えない。


だけどこれは、あまりにも悲しい。


「自惚れんな! 先輩の事なんか好きじゃないし、先輩とだけは付き合わない!」


気がつけば叫ぶようにしてそんな事を言い放っていた。

私の言葉に目を丸くして、ただボー然とこちらを見ている先輩のその様子に、私は少しずつ冷静さを取り戻し、上がった熱がどんどん下がっていくのを感じた。

握りしめていた拳は汗で気持ち悪くって、解いた後思わずスカートの裾で手を拭った。


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