キミと初恋。
「それに勝手に設定増やさないでくださいよ。なんですか私に一目惚れとかいうあれは」

「あれ、信じてない? 本当に一目惚れだったんだけどな」


片手に持ってたジュースのカップをテーブルに置き、立ち肘しながら私を真っ直ぐ見つめてくる。


甘いフェイスに甘い囁き。


ほら、こういう事するから女子は簡単に勘違いするんだ。


「なるほど。先輩はもう彼女なんて作りたくないような事言ってましたが、実は根っからのタラシなんですね」

「ばーか。冗談に決まってるだろ。俺だって相手選んで言ってるつーの」

「へぇー、そーなんですかねぇ?」


なんて言いながら疑いの視線を先輩に送りつけてるけど、きっと先輩の言う通りなんだと思う。

こんな誰もがときめいてしまうような事をさすがに軽々しく他の女子にはしないと思う。

だって先輩、彼女になった子達の隣でいつもぶっきらぼうな顔ばかり見せてたから。

これはきっと、先輩が私を友達だと思っての扱いなんだと思う。

私に下心を出されることはまず無いと信用しての行動であり、先輩の考える友達というテリトリーに入った相手にだけ見せる、一種のじゃれ合いなんだと思う。

普段は大人びて見えるけど、中身はきっとこういう子供っぽいところが本来の先輩で、そういうのを安心して見せれる相手。

それが今まで同性以外ではいなかったんだと思う。


だから私は、こんな事で勘違いしたりなんてしないんだ。


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