キミと初恋。
『……ふーん。なーんだ』


私が昨日、先輩を殴ってから起きた事の全てを話し終えた後、りょうちんの上がりまくっていた熱はすっかり冷えていた。


「だから本当に友達としてお昼一緒に食べるだけなのよ」

『あたしも食堂での一件は遠目で見てたけどさ、青井先輩がかすみに一目惚れしたとかも言ってたじゃん?』

「あっ、あんなの信じないでよね! 私を隣に置く口実というか、元カノの前だったから売り言葉に買い言葉というか……とにかくそれはないから!」


そうそう、そうだった。先輩ってばそんなデタラメな事まで言ってたんだった……。

いくら元カノが執拗に言ってくるからってそれはないでしょ。


『いや、むしろそれは誰も信じてないし。あんな正拳突きした女子に一目惚れとかあり得ないっしょ。しししっ』


た、確かに……。そりゃそうだ。そもそもあんなデタラメな出来事を無理矢理纏めようとして一目惚れなんて言ってたけど、話の流れが崩壊しすぎてる。

先輩の浅はかな思惑は失敗してたのか、それは良かった。

私はまだ明日学校に行く勇気が持てた気がした。


『まぁでも一部では、一目惚れがもし本当だとすれば、青井先輩はかなりのドMだとか言ってた。そのうち先輩への告白の形も変わってくんじゃない? 血なまぐさい方向に』


そう言ってりょうちんは再びしししっと笑った。

それってつまり、先輩に告白する女子はとりあえず先輩を一発殴れば振り向いてくれると……?

ないない! なんだそりゃ。あり得ないでしょ。

でもそんな噂が出てたのなら、私はちょっと笑えないんだけど……。


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