キミと初恋。
「ご馳走さま! 行ってきます」

「行ってらっしゃいって、かすみカバンはどうしたの?」

「学校に忘れてきた」

「呆れた……どうやったらそんなもの忘れて来れるのかしら。風花も帰ってくるんだし、少しはお姉ちゃんを見習いなさい」


母の小言は聞こえないフリをして、私は気にせず家を飛び出した。


いくらお姉ちゃんのようになろうとしたって無理だもん。お姉ちゃんのようになれるものなら、とっくにそうなってるし。

お姉ちゃんは言わば私の神だ。神には憧れを抱きはするけど、なれるもんじゃないじゃん?


「あっ、傘、忘れてきちゃった……」


厚い雲に覆われた空を見上げながら、どうか家に帰ってくるまでこの天気が持ち堪えますように、と私は空に祈りを捧げながら、駅へと向かった。


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