キミと初恋。
どう言えばみんな納得してくれるのだろうか。

先輩の彼女になるのには理由がいらないのに、友達になるのには理由がいる。

普通逆でしょ?


「かすみを隣に置く理由なんて一つしかないでしょ」


私が頭を抱え出したその時、ざわつきを取り戻しつつあった教室内にズカズカと割り込んで来たのは、りょうちん。


「おはよう、紺野さん」

「紺野さん紺野さん、それってどう言うこと? 何か理由知ってるの⁈」


小倉さんの挨拶に被さるようにして、山下さんはりょうちんにがぶり寄った。

りょうちんは山下さんのテリトリーから少し離れるようにして、私の隣に立ち、話を続けた。


「理由もなにも、茶帯の空手女子を隣に置く理由なんてひとつじゃん。それって完全にガーディアンとしてでしょ」

「ガーディアン?」

「そう、ガーディアン。青井先輩を他の女子から身を呈して守る役割ってこと」


いや、呈したりなんてしないから。したくないし。

でも山下さんは信じ込んでるみたいで「なるほどー」とか言ってるし。

小倉さんに関しては「やっぱりねー」なんて言っちゃってるし。


りょうちんは役者だ。とてもあっけらかんと言い切るくせに、どことなくそれが真実味を帯びるようにさらに話を続けた。


「それしかなくない? 昨日の一件がまさにそれじゃん。先輩の代わりに水をかぶっちゃってるし、そもそも先輩は女子相手に手出し出来ないけど、かすみは違うじゃん?」

「「納得」」


山下さんと小倉さんは声をハモって納得した。

いや、納得しないで。私なんか簡単に手を出す野犬みたいじゃん。

しかもあくまで友達役なはずなのに、これじゃ先輩のしわ寄せは全部私の方に来ちゃうじゃん。

周りすら認める風よけ……絶対嫌だ。


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