間違いだらけ
しかし、これだけ仲の良い私たちでも一番の難点とも言えるのは、二年前まで、本当に彼氏と彼女の関係だったということだ。
中学二年生のとき、私から告白をしたのが始まりだった。けれど、友達から彼氏彼女へと関係が発展してしまったせいで、接し方がぎこちなくなり、また一年後には私からやっぱり友達でいようと別れを切り出していた。しかも、当時葵がまだ私のことを彼女として好いていてくれたことも承知の上でだ。
初恋だったこともあって恋愛の仕方が分からなかった、といえば納得がいくかもしれない。
幸いにも、あれから二年経っても私たちは上手く友達関係を続けられている。その証拠が今の状況だろう。
でなければ、たかが日直の仕事くらいで、わざわざ一緒に居残りなんてしないだろうに。
では何が難点なのかというと、それは私が、まだ葵を好きでいるということ。
当時、あまりのぎこちなさに勢いで別れを切り出したのはいいものの、心の隅ではずっと葵を想っていた。
今思えば、なぜそんな行動をとったのかわからない。誰だって初めはぎこちなくなるものなのではないかと、後になって思った。先のことを考えず、思ったことをすぐに行動に移してしまうのは私の悪い癖だった。
もう、葵は私のことを恋愛対象としては見てくれはしないだろう。その証拠に、葵には別の好きな人がいる。しかもその相手は、葵のバイト先の先輩だというのだから、どうしようもない。
「ねぇ、あの人とは最近どうなの?」
そう言葉にした瞬間、葵の頬がほんのり赤みを増したのがわかった。それを見て、明らかに落胆した自分がいる。
聞かなければ良かったなんて、もう遅い。
その照れた顔が、自分に向けられたものなら良かったのに。
「この間、デートに誘った。今度の日曜」
葵が、小さめの声で恥ずかしそうに言った。ちくりと胸が痛む。
「すごい!どうやって誘ったの?」
「映画の趣味が同じってことが発覚して、じゃあ見に行こうって言ったんだ。そしたら、いいよって」
「おめでとう!」
やるねぇ。と葵の肩を叩いた。
葵の顔がさっきよりも真っ赤に染まる。
___嫌なくせに、なんで応援なんてしてるんだろう。
本当なら「行かないで」とこの場で叫んでやりたい。
自分が今どうしたいかはっきりわかっているくせに、こんな時だけ行動に出来ないのは自分が臆病だからだ。