甘々王子に懐かれた!?
「俺、みんなのものになった覚えないよ。俺は、優茉ちゃんだけのものなの」
「私も、先輩を自分のものにした覚えはないんですけどね」
「そこは突っ込まなくていいの!」
先輩の表情はコロコロ変わる。
きっと、私が見てきた人の中で、一番表情が豊かな人。
だからといって、先輩と仲良くなるつもりはないけど。
「だから、一緒に帰ろ?」
子犬のように、目を潤ませてオネダリをしてくる。
騙されてはいけない。これは技であり、攻撃なのだ。
「帰りません。では」
「……待ってるから、俺。昇降口で待ってる!」
「こんな暑い中、待ってられないと思いますよ。早く帰って、エアコンの効いた部屋に行ってください」
今度は好きにしてくださいとは言わなかった。
先輩はきっと、夜が明けたとしても、私を待ち続けるんだろう――。
「幸っ」
もしかしたら、もう部活に行ってしまったかもしれないと思っていたが、幸は私のために待っていてくれたようだった。
「優茉!大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。幸、待っていてくれてありがとう」
「いやいや、そんな感謝されるほどでもないって。先輩が教室に来ることなんてなかったからね、心配してたの。何もされなかったんだね?」
「うん!」
良かった、と安堵の笑みを浮かべる幸。
「じゃ、優茉の無事も見届けたことだし、部活行ってくるわ」
「行ってらっしゃい」
おう、とかっこよく幸は片手をあげて出ていった。
さ、私も準備するか。
と、私は自分の席に行くと、女子三人が私の席を囲んでいた。
少し派手な女子で、クラスでもキャピキャピ騒いでいる系の子達だった。
「赤坂さん、王子とはどういった関係なの?」
「王子、あんたの下の名前呼んでたじゃん。もしかして、付き合ってんの?」