甘々王子に懐かれた!?


ありがとうございます、とお礼をして、外に向かった。


自分の靴を出し、店を出る。


すると、スロープの棒にもたれかかった先輩がいた。


遠くを見ている先輩は、私の知っている先輩じゃないような、それほど遠い存在に感じた。


やだ。泣くな、自分。




「先輩」




周りにあまり聞こえないように、小さくいう。


それでも、この距離だと先輩には届いているはずだ。


もう一度先輩と呼んでみるが、無視。


そんなに、私と話すのが嫌なのか。




「……慎助先輩」




「えっ」




隣に立って、初めて名前で先輩を呼ぶと、素っ頓狂な声が返ってきた。


やっぱり聞こえていたんだ。




「今、優茉ちゃん、俺の名前……」




「そうです。先輩の名前、初めて呼びました」




これまで、先輩としか呼んだことがなかったから、緊張したんですよ。




「……ダメだよ。俺のそばに来ちゃ」




「嫌です。先輩、ずっと私のこと避けてますよね。なんでですか?セリカさんと付き合い始めたからですか?」




とことん突っ走ってやろう。


呆れられても、嫌われてもいい。


気が済むまで、先輩に聞いてやる!!
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