甘々王子に懐かれた!?
――――――
「優茉ちゃん、それ重そう。持とうか?」
さっき、理科の先生にノートを運んでくれと頼まれ、準備室までの道を歩いていると先輩と瀬戸川先輩がこっちに向かってきた。
もちろん、私を見てくれているのは瀬戸川先輩だけ。
先輩は視線を逸らして別のところを見ている。
「大丈夫ですよ。すぐそこですし」
「理科準備室に行くつもりなんだよね?結構遠い気がするけど」
バレたか。
理科準備室はここから、あと一回階段を上った一番奥にあるところ。
すぐそことは言い難い場所だ。
でも、手伝ってしまうと次の授業に間に合うかが怪しくなる。
「半分貸して。手伝うよ」
瀬戸川先輩は私の隣に立った。
ここまで来てくれて断るのもなんだし、付き合ってるふりをしているわけだから、ここ一つ甘えさせてもらうことにした。
私はノートを取ろうとすると、瀬戸川先輩から上から半分以上取ってくれた。
明らかに私の方が少なすぎる。
返してもらおうとすると、その行動はよまれていたようで、ヒョイと簡単にかわされた。
「慎助、先に行っといてくれる?」
瀬戸川先輩は階段をのぼりかけたところで先輩に言うと、先輩は無言で歩き始めた。
「……無視、ですかね」