甘々王子に懐かれた!?
だから、俺は口にする。
その答えは、ノーだと。
「じゃあ、なんで俺に怒ってるわけ?」
優茉ちゃんが好きでお前に嫉妬してるからだろ!
そう言ってやりたい衝動を抑えて、グッと下唇をかんだ。
愁は、別に言いたくないならいいけど、と言いながら冷たい視線を俺に送った――――。
――――――
【優茉side】
「最近やたら瀬戸川先輩が絡んでくるじゃない。やっぱり、あの日になにかあったでしょ?」
帰り際、幸が私と瀬戸川先輩の関係を疑ってきた。
付き合っているふりをしているわけだから、私と瀬戸川先輩の距離は近くなくてはいけない。
幸は何度も不審に思いながら、一週間様子を見ていたのだろう。
「別に何もないよ?」
付き合っているふりをしているんだ、なんて言ったら幸はなんて言うだろうか。
このふりもいつかは終わりがくるわけだし、このことを知っているのは瀬戸川先輩と私だけで十分だ。
幸に隠し事をするのは心苦しいけれど、仕方ない。
「ぜーったいおかしい。なに、私に言えないことなの?」
私は言いそうになる口を抑えて、何も知らないというような顔を作った。