甘々王子に懐かれた!?
「でも、俺は、今の状況から抜け出したい。優茉ちゃんと付き合いたい」
だから、大きく息を吸って先輩は言った。
その言葉を私はきちんと受け取った。
「俺は芹香にちゃんと言う。芹香と向き合う。だから、芹香との決着がついたら、俺と、付き合ってくれませんか」
先輩の声は徐々に小さくなって、震えていった。
先輩は不安なのかな。私はいつになろうと、先輩を待ち続けるのに。
ああ、でも、これまで何度も先輩を突き放すようなこと言ってしまったもんね。
今回は待つよ。先輩の大切さが、分かったから。
でも、ただ待つのも嫌だ。
私だって、セリカさんと話をしたい。
「先輩、私がセリカさんと話します」
こんなこと言われるとは思っていなかったのか、先輩は目を丸くして素っ頓狂な声を上げた。
私は、先輩の彼女になりたい。セリカさんに認めてもらえるような、彼女に。
誰もが認める彼女、じゃなくて、今の彼女であるセリカさんに認めてもらえる彼女になりたいのだ。
だって、セリカさんからの恨みを持ったまま彼女になるなんて、嫌じゃない?
「だ、だめだよ。芹香は何するかわからないんだよ。俺が言うから、優茉ちゃんは待ってて?」
「それでも行かせてください。私は、なんと言われようともセリカさんと話します」
私の決意の強さが分かったのか、先輩が折れてくれた。
「でも、一つだけ約束して。危ないと思ったら、逃げるんだよ。身を危険に犯してまで、俺は話してほしくない」
身を危険に犯してまでって、セリカさんはこれまでに一体何をしてきたのだ?
捕まるようなことはしてないよね……?
ほんの少し身震いがした。
いや、関係ない。私はセリカさんに認めてもらうまで話す。この思いは変わらないのだから。
「ありがとうございます、先輩」