甘々王子に懐かれた!?
彼女は、そう言ったんだ。
先輩や瀬戸川先輩は、セリカさんのことをあまり良く言わなかった。
だから、色々覚悟してここに来たのに、こんなにあっさり決まっちゃうなんて。
「あんまりいいこと言わなかったでしょ、私のこと。はっくんとか」
「えっと……」
言葉を濁らすと、セリカさんはうんと受け取ったのか、どこか切なそうに笑った。
そう、切なそうに笑ったのだ。
「私の性格が悪いことは分かっているのよ。でも、はっくんのこととなると、どうしてもムキになっちゃうの。酷いことをしたと私でも分かっているわ。それでも、無理で……」
先輩と付き合っていた時のことを思い出しているのか、目を細めて優しい雰囲気を出して話し始めた。
セリカさんって、ツンデレさんなのかな?
「付き合っている時から、どこか遠く感じてはいたわ。でも、気づきたくなかった。……いつだったかしら、はっくんから聞いたのよ。“探している人がいる”って。私よりも思っている人がいると思うと、許せなくて、荒れてしまったのよ」
その時に別れようって言われたけど、私は別れたくなかったんだ、そういう彼女は、恋に心を染められた普通の女の人だった。
「まぁ、もちろんそんなことしたら別れることになるわよね。その時は私もちゃんと別れることにしたわ。でも、諦められなくてね。前、会ったときにあぁ、やっぱりこの人だって思った。……それと同時に、隣にいたあなたが憎くて、探している人ってこの子かって直感で感じた時はさらに憎く思った」