甘々王子に懐かれた!?
聞いても大丈夫なんだよね、ね?
中々喋り始めない私を心配してか、熱があるのかとか聞いてきた。
……相変わらずのバカ先輩だ。
「以前にも一度聞いたことですけど、なんで私がターゲットになったんですか?記憶っていうヒントだけじゃ分かりません」
「あ、ああ……」
予想していた通りの困った顔で、先輩は視線を泳がせた。
「どうしたんです、先輩」
「……優茉ちゃん、ほんっとーに思い出せない?」
それも無理ないかなあ、と静かに言った先輩。
いつの話なんですか、それは。
気になるけれど、隣の物悲しさを含む綺麗な先輩の顔を見たら、言葉は空へ舞った。
「長くなるから、あの先の公園で話そっか」
「は、はい……」
――――――
「そのストラップさ、ずっとつけててみたいな事言われなかった?」
「え?言われました。お母さんに」
雑草がところどころに咲いたこの公園は、幼い頃はよく遊んだものの、今では滅多に遊ばなくなった懐かしい公園だ。
そろそろ無くなるんじゃないかと思うくらい、色のはげた遊具がポツンと寂しげにある。
端に設置された木のベンチに、先輩と私を座った。
「なんで分かったんですか?」
私の素朴な質問に、先輩は答えなかった。
なぜ、私がお母さんにずってつけていなさいって言われたことを知っているのか。