甘々王子に懐かれた!?


──────『可愛らしい名前ですね』




「……覚えてない?」




「ご、ごめんなさい……」




私は、記憶力という力があるのかどうか怪しいくらいに物覚えが悪いし、過去のことを思い出しても曖昧なことが多々ある。


これまで軽く自分のこの頭を嫌ったこともあったわけだけど、ここまで自分の頭に腹が立ったのは初めてだ。


なんでこんな大事な出来事を覚えていないんだ、この頭は。




「なんで謝るのさ。……その日からお互いの家を行き来したりするようになって、お母さん同士も仲良くなって。これからもっと……って時に、俺の引越しが決まってさ」




──────『えっ、理沙(慎助のお母さん)引越し……?』

──────『そうなの。旦那の仕事で……』

──────『残念……、理沙と仲良くなれたのに。……何より、しんすけくんと優茉が離れちゃうのが』

──────『本当に……』




──────『慎助、よく聞いて?……また、引越しすることになったの』

──────『えっ……?』

──────『ゆうまちゃんと、離れ離れになるの』

──────『い、いやだ!いやだ!ぼく、ゆうまちゃんとはなれたくない!』

──────『ごめんね、慎助』

──────『ぼくだけ、ここにのこる!ゆうまちゃんといっしょに!』

──────『無理なの。一緒に、ついてきて』

──────『い、いやだぁぁ!』




──────『優茉、よーく聞きなさい』

──────『どうしたの、おかあさん?』

──────『しんすけくん……、お引越しするらしいの。遠いところに』

──────『……おひっこしって、どっかいっちゃうんだよね……?』

──────『そう。しんすけくんと、お別れするの』

──────『えっ、いやだ!ずっとしんすけくんといっしょってやくそくしたもん』

──────『それが無理なの。もうすぐ、お別れしなくちゃならないの』

──────『なんで、なんでそんないじわるゆうの!おかあさんなんかきらい!』
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