甘々王子に懐かれた!?
私は、糸をぷつりぷつりと切り、服を裏返した。
ゆっくり、ゆっくり、赤色のものが見えてきて。
「……っ」
「あったでしょ」
視線をあげれば、嬉しそうに笑う先輩の顔。
下を見れば、半分のハート。
私たちがこうなるなんて確証は、どこにもなかったはずだ。
なのに、それを分かってでもこんなふうに作ってくれていたのが、素直に嬉しかった。
「先輩……、私、先輩のことが大好きかもしれません」
「そんなの、もうとっくの昔から知ってるよ」
大好きな大好きな先輩。
はじめは大っ嫌いで、この世で一番嫌いなんて思ったりもしたけれど。
離れられなくて、こうやって好きになった。
「優茉ちゃん、優茉ちゃんもこうして」
先輩は服を裏返して、ハートのほうを表向けにして着せていた。
私も服を破らないように、と慎重に手を動かして、ハートを表にした。
「みて、素敵だね」
ハートとハートが合わさって、一つのハートになった。
待っていたと言わんばかりに綺麗に揃って。
色褪せたうさぎとくまが光を放ったような気がして、目を閉じた。
『おめでとう』
ストラップが、祝福してくれた気がしたんだ――――。
End.