甘々王子に懐かれた!?
頭、イカれているのかもしれない。
きっと、普段から鬱陶しい先輩といたために免疫がついたんだ。
「お前、とことん腹立つな。こうなったら、泣かせてやりたいわー」
「そっれなぁ!泣かそう、泣かすまでやろう!」
五人の意見が合致したようで、私をいじめるらしい。
私って、怒ると後先考えずに突っ走っちゃうんだよねぇ……。
困った。
昨日は、呑気に……ではないけれど、そこまで深く考えずに上靴隠されるかもとか思ってたけど、これ、ガチでありそうじゃない……?
昨日はあんなに自分ビビっていたのに。
今じゃ、やってやろうじゃんかオラァって感じだよ。
「どうぞお好きに。とりあえず、帰らせてくれません?」
「お前さー、自分の立場わきまえて言ってんの?生意気すぎ。その口一回閉じろや」
言えって言ったり、閉じろって言ったり。
忙しい人たちだな。
「その顔、ウザイんだよ」
パシンッと辺りに響き渡ったんじゃないかと思うくらい、強く、綺麗に頬を叩かれた。
「痛いです。肩も痛いし、どれだけやれば気が済むんですか?」
「いや、お前が悪いんだろ?もう一回、叩いてやろうか」
リーダー格の女子が手を振りあげた。
また殴られんのか、と睨みながら待っていると、聞き慣れた声が私を呼んだ。
「優茉ちゃん!」
先輩……?
今にも泣き出しそうな顔をした先輩が、走ってきた。
「優茉ちゃん、大丈夫?」
ほっぺ……と、先輩の手が私の右頬を撫でた。
「赤くなってる。もしかして、叩かれ――」
先輩は自分の言葉を言い終える前に、目の前の女子達を睨みつけた。
いつもにこやかな先輩が怒っている。これは、女子達にとっても意外な展開だったんだろう。
さっきまでと打って変わって、怯えている。
……先輩、ナイス登場です。
「ねぇ、君たちが優茉ちゃんを叩いたの?」
「えっ。やっ、違います!あの、そいつが先に私たちに喧嘩売ってきて……!」
「優茉ちゃんは、そんなことする子じゃない。嘘つくなよ、お前らがやったんだろ?」
〝君たち〟が〝お前ら〟に変わった。
先輩がお前ら、なんて言うなんて。
意外すぎて、私も開けた口が塞がらない。