甘々王子に懐かれた!?
「……もう、あいつら本当に最低!さっさと見つけ出そ」
私よりも怒ってくれる幸。
昔から一緒の幸。いつもいつも、こんな私を叱ってくれて、一緒に笑ってくれて、泣いてくれて、怒ってくれる。
大好きだよ、幸。
「幸、机あったよ。椅子もある、ちゃんと」
階段の踊り場の隅に、適当に置かれた机と椅子があった。
そこには、中に入れていた教科書や本も、無事に入っており、安心した。
「じゃあ、教室まで運ぼ――――」
「その机、優茉ちゃんのなの?」
上から、先輩の声がした。
隣には、先輩と一番仲が良く、先輩の次くらいにイケメンだと噂の瀬戸川(セトガワ)先輩もいた。
「もしかして、前の奴らが?」
「はい、まぁ、多分そうだと思いますよ」
「あいつら!俺が一発ぶっ叩いてやる」
そう言って、先輩が私たちの教室のほうへ体の向きを変えると、隣にいた瀬戸川先輩が止めた。
「それをして、彼女が救われるというのか?頭冷やせ、バカ」
おぉ、瀬戸川先輩は先輩と違って冷静でクールなタイプなのかな?
どっちも甘かったら、とんでもない事になりそうだもんね。
いいコンビだ。
「とりあえず、机運ぶの手伝おうか?」
瀬戸川先輩は、先輩を止めると、私たちの方を向いた。
初めて会うのに、優しい先輩だなぁ。
「いや、大丈夫です。ありがとうございます、瀬戸川先輩」
幸も同じように、ありがとうございますとお礼を言っていた。
瀬戸川先輩は、納得したようだけど、先輩は運ぶ運ぶとうるさい。
瀬戸川先輩も……というか、この場にいた皆が思っていただろう。
瀬戸川先輩は、先輩の頭を一発軽く殴って黙らせた。