甘々王子に懐かれた!?
「優茉ちゃん、だっけ?」
いつも聞く声とは違う声が私を呼んで、私は緊張する。
そりゃ、瀬戸川先輩が呼んだのだから違うのは当たり前なのだけど。
「こいつの相手、またしてやって。優茉ちゃん優茉ちゃんって、優茉ちゃんにゾッコンだから」
「は、はぁ」
先輩は暴露されると思っていなかったのか、慌てて瀬戸川先輩の口を塞ぎにかかる。
でも、瀬戸川先輩も百八十はあるだろう高い背で、中々塞ぐことができていない。
「ゾッコンなのは、分かってたことなのにね」
って呆れたように幸が言うから、思わず笑ってしまった。
私は自分の机を持ち、幸には申し訳ないけれど椅子を持ってもらい、二人で先輩を放って教室に向かった。
瀬戸川先輩はクールかと思ったけど、意外とやんちゃな人なのかな……?なんて感想を持ちながら。
――――――
私は人通りの少ない階段に来ていた。
帰りのSHRが終わり、幸に頑張ってと伝えると、リュックを背負ってここに来た。
何となく、まっすぐ帰りたい気分じゃなかった。
かと言って、人の多い教室や、廊下をブラブラしたいわけでもなくて。
そして、私の今の思いにぴったりの場所がここだったわけだ。
ここは、教室のある校舎とは反対のところで、本当に用事がない限り、滅多に通らないところなのだ。