甘々王子に懐かれた!?



「はー……、しんどいしんどい」




「笑い終わりました?」




「うん。もう、優茉ちゃんやめて……」




俺の腹筋が筋肉痛になる、と先輩は困ったように笑った。


それ、私のせいじゃないですよね……。


先輩のツボが浅いだけですよね……。




「優茉ちゃんは、帰宅部なんだ?」




「はい。することなくて」




中学の時は文化系の部活に所属していたが、高校は入らないと決めていた。


やればよかったと後悔はしていないが、やっていたらどうなっていたのかは気になるところだ。




「先輩は、なんの部活に?」




「俺?慎助と同じバスケ部だよ」




「背が高いから、有利ですね」




そうか、バスケ部かぁ。


確かに、そんな雰囲気出してる。


……先輩がバスケ部なのは、ちょっと似合わないけれど。


バスケの試合になったら、甘い先輩もかっこよく見えたりするのかな。




「……優茉ちゃんさぁ、今、あいつのファンクラブの子に色々やられてるんでしょ?」




急に真面目な顔つきになって、その話題を振ってきた。


同情とか、そういう感じは出ていない。




「はい。……まぁ、私がちょっとやりすぎちゃいまして」




「優茉ちゃんがやりすぎた?」




「そうなんです。かなりイラついたので正直に言ったら、相手を激怒させてしまいまして」




意外なのか、瀬戸川先輩は目を丸くした。


まぁ、私はクールとかそんな感じの人じゃないから、そうなるのも無理はないか。




「そのことで、あいつに手伝えることない?」




「え?」




「それさ、あいつと関わったのが原因なんでしょ?それで、あいつなりに結構悩んでてね。あいつが、優茉ちゃんから頼られないのが悲しいって」




あの、先輩が……?


全然空気読めてない、先輩が?




「ははっ、あいつのこと、そんなこと考える人じゃないと思ってたろ?まぁ、実際、そうやって悩みながら君に会うことはやめる気ないからね」




「し、失礼ですが、そう思ってました……」




「うん、まぁ、あの感じからしたら仕方のないことだよ。……なにか、あいつにできることがあったら頼ってやって。最近そのことでうるさいから、そろそろ静かにさせて」




俺大変なんだよ、と瀬戸川先輩は軽く怒るふりをした。


その姿がお父さんらしくて、思わずお父さんみたいと漏らすと、どこがだよと頭を小突かれた。
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