甘々王子に懐かれた!?
「あの、先行ってくれます?」
先輩は、百八十二センチという高さで、私は百五十五センチ。
約三十センチの身長差があるわけだ。
足の長さも違うから、足の速さも変わってくる。
先輩にとっては、私のこの普通の速さが遅く感じているのは間違いない。
きっと先輩は、自分のいつもの速さで歩きたいはず。
本当のことを言えば、先に行って私の前から消えてほしいんだけど。
「どうして?俺は、優茉ちゃんと歩きたいから来たのに」
「私なんかといても、何も楽しくないでしょう?先輩だったら、私なんかよりももっといい人のところに行けるじゃないですか」
「だーかーらー、いつも言ってるでしょ?俺は、優茉ちゃんと、一緒にいたいわけ。他の子じゃ嫌なんだよ」
他の女子だったら、キャーッとか、ドキドキとかするんだろうけど、生憎私は、他の女子とは違う。
こんなものではときめかない。
「先輩、私は先輩といたくないんですけど」
「俺がいたいの」
……自己中心的だなこの人は!
私の意見は無視ですか?
「というかさぁ、優茉ちゃん?俺のこと、いつになったら名前で呼んでくれるの?」
「いつになっても呼びません」
「一回くらい呼んでよ!」
ワガママか!
駄々をこねる小さい子か!
これでなんで先輩なんだろう……。
絶対、私のほうが先輩な気がするんだけど。
「無理です。学校着いたので、離れてください」
「えっ、ちょっ……」
私は正門を通った瞬間、昇降口まで走った。
あの先輩と一緒にいたら、他の女子からの視線が痛いったらありゃしない。