甘々王子に懐かれた!?
呆然と消えた優茉ちゃんのあとを見ていると、小さく弟くんの方から声が漏れたことに気づいた。
「中、どうぞ……」
「あっ、失礼します」
緊張した面持ちで弟くんが話しかけてくるもんだから、こっちも緊張してくる。
弟くん、結構背高いな。
きっと、高校生になったら百八十は軽々越すだろうな。
「えと、ありがとうございます。こんな俺に会いたいとか……」
部屋の真ん中にあった小さなテーブルに向かい合わせに座ると、律儀に弟くんがそんなことを言ってきた。
「あぁ、いやいや、ありがとうとか……。俺がただ会いたかっただけだから、そんな……。あと、敬語もいいし」
「無理ですよ、だって高校三年生なんでしょう?先輩すぎます」
なんて可愛らしい……!
律儀なところがいい!俺、赤坂家に入りたいよ。
「いいよいいよ、学校違うんだからね。タメ口で話そう?」
弟くんは意外と頑固な人のようで、いやいやと首を振っている。
うん、ここまで言って折れなかったらなかなか折れない人だろうし、この話はやめにしよう。
「うーん、分かった。じゃあ、自己紹介しよう。俺は、八田 慎助」
「俺は、赤坂 陽夏(アカサカ ヒナ)です。中学二年生です」