甘々王子に懐かれた!?
「優茉」
「あっ、幸、おはよう」
階段を早足で降りてきた、私の幼い頃からの親友であり、お姉ちゃん的存在。
藤宮 幸(フジミヤ ユキ)。私と同い年。
「幸、何かあったの?」
幸がわざわざ私を迎えに来る時は、必ず何かある時。
お姉ちゃん的存在の幸が、私に聞いてほしいことがある時は珍しい。
幸は「あのさ……」と話し始めた。
「私って、魅力ないかな」
「幸は、いーっぱいいい所あるよ?」
「ありがとう、優茉。あのね、フラれたの、あいつに」
幸の言うあいつとは……、これまで幸と一年付き合っていた多野くんのこと。
多野くんと幸は、幸せそうなカップルだったのに……。
「それでね、別れた理由が私に魅力がないからだってさー」
「それは嘘だよ。幸にはいっぱいいい所あるもん。多野くんだって、一年も一緒にいたんだから、幸の魅力にはいっぱいいっぱい気づいたはずだよ」
幸には数え切れないくらい、たくさんの魅力がある。
その魅力に気づいた男子は結構いて、噂で幸のことを好きな男子をいっぱい耳にしている。
「きっと、嫌なことがいっぱい重なって、幸の魅力が隠れちゃったんだろうね」
「嫌なこと、かぁ……」
あ。思わず、サラッと嫌なこととか言っちゃったし!
なんて失礼な事言ってるんだ私は!
流石に長年一緒にいるからと言って、言っちゃいけないことと悪いことがあるでしょ、私!
「ご、ごめん、幸……」
「なーに言ってんの、そうやって、包み隠さず言ってくれる方が有難いのよ。ありがとう、優茉。やっぱ優茉だわ。恋愛はしばらくやめ!優茉との時間につぎ込むわ」
ニッと白い歯を見せて、幸は笑った。
きっと、幸はまだ吹っ切れてないだろうに、こんな眩しい笑顔を……。
やっぱり、幸はお姉ちゃんだ。