甘々王子に懐かれた!?
――――――
「体育だるいぃ……」
「ほんと……」
更衣室で着替えを済ませ、体育館に向かう途中、二人で体育に対する不満をこぼしていた。
私たち二人は、運動神経というものがないんじゃないかと思うくらいに運動ができない。
走りも遅いし、ボールを使う種目もだめ、こんな私たちが体育に不満を持ってしまうのも無理はない。
オマケに先生も苦手なんて、どこまで体育嫌いにさせたら済むんだこのやろう。
なんて考えながら歩いていると、前から女子特有の甲高い笑い声が聞こえてきた。
モヤモヤとぼやけていたその姿は次第にくっきり見えるようになり、見えた瞬間に顔を歪めた。
私に対してイジメのようなわけのわからないことをしている、違うクラスの女子二人組だ。
相手も気づいたようで、二人で顔を見合わせて笑っている。
「最悪」
隣で幸が呟いた声は、私しか聞こえてないんだろう。
最悪だ。私と幸は、歩くスピードを速めず遅めず、一定のスピードを保って歩く。
通りすがるとき、私だけに聞こえるように二人は言ってきた。
「調子のってんなよ。しね、ブスが」
百歩譲ってブスは認めますけど、死ねまでは言われたくないですねぇ?
調子も別に乗ってない。ただ、あんたらの行動が幼稚すぎて笑えてくるだけ。
私だけに聞こえていると思っていたが、隣にいた幸にはバッチリ聞こえていたらしい。
幸の顔は誰か一人でも殺めてしまうのではないかと思うくらいに、可愛い顔がどこか遠くに行ってしまっていた。