甘々王子に懐かれた!?


私こそ浮かれていたのかもしれない。


思っていたことが、知らないうちに漏れることなんてそうそうないのに。




「や、やっぱり幻聴だったよね」




恥ずかしそうに先輩は困ったようにまゆを下げた。


こんな先輩珍しい。


ぜひ写真に収めて、あとでからかう道具として使いたいものだ。




「いいえ。私こそ浮かれすぎて口から漏れていたようです。気をつけますね」




先輩はロボットのように固まってから、火山が噴火したように顔を真っ赤に染めた。


わぁ、本当にりんごみたい。


熱でもある?っていう人の気持ちが、今分かったかも。




「なななに、どうしたの優茉ちゃん。今日はハッピーデーなの?怖いよ。こんなに褒められたら怖いよ」




「ハッピーデーとでも思ってたらいいんじゃないですか?」




あの、先輩。


いつもの調子の先輩なら意識せずにいられるのだけど、こんなに照れた先輩の隣にいたら意識しちゃいます。


私はこの先輩のことは嫌い。


だって初めはストーカー紛いのことしてたんだよ?


空気も読めない人、だし……?




「あっ、電車もう来る!急がなくちゃ」




「えっ、本当ですか?走りましょう」




きっと、先輩にとっては早くホームに行きたかっただけなのだと思う。


でも、私にとっては意識せざるを得ない行為。


先輩は、私の手首を掴んで走り出したんだ――――。
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