甘々王子に懐かれた!?
なんでだっけ……。
今真面目に考えてみると、分からない。
「優茉ちゃーん?」
「嫌です。呼びません」
「えぇー、呼んでもらえると思ったのにぃ」
最後の文字を伸ばし、口先を尖らして可愛こぶる先輩。
なんでこの先輩はこんなにも容姿は整っているのに、性格が残念すぎるのだろう。
ああ、これが世にいう宝の持ち腐れってやつなのか!
理解した。
「なんでそんな風に思ったんですか。私が呼ぶことはないと言うことはよーく分かってらっしゃるでしょう?」
「分かってるけど……。その理由がいい方だったらいいなぁっていう、俺の淡い期待?」
「どういうことです?」
「俺のことが好きで、照れくさくて呼べないとかさ?」
「……っ」
そう言って、先輩は自分の顔を私の顔に近づけてくる。
そのイケメンなお顔が、私の前に……。
私の顔が火照っていくのが私にも分かる。
思いっきり視線を逸らした。
「悪いほうです。先輩なんか、嫌いですから」
これは半分、自分への言い聞かせ。
最近おかしいんだもん。初めは、本っ当に嫌っていたのに、今はなんかドキッとかしたりしちゃうんだから!
先輩のばーかばーか!
「そう……。まだ、俺のこと嫌いなのか」
「そうですよ、大っ嫌いです」
私はこの時、そっぽを向いていたから分からなかったんだ。
切ない顔で、そんなことを言っていたなんて――――。