甘々王子に懐かれた!?
「なんないよ。芹香(セリカ)とは、もう二度と」
ざんねーんっ、と断られたくせにケラケラと笑うセリカさん。
じーっと二人の様子を見ていると、セリカさんの視線がこちらに移った。
一瞬、睨まれたような……?
「この子は?」
その声が怖くて、私はキュッと先輩の裾を握った。
先輩はそっと左手で私を自分の背中へ回した。
今はひょっこりと顔が出ている状態。
「そんな警戒しなくてもー、なにもしないよ」
分かんないじゃん、といつもより低い声が頭上から降ってきた。
怒ってるの、先輩?
「改めて聞くけど、この子は誰?」
「……後輩、だけど」
「名前は?ちなみに、私の名前は神崎 芹香(カンザキ セリカ)ね」
言わなくても大丈夫だよ、と優しい声で言ってくれる先輩。
でも、名前を言われたからには言わなくちゃいけない気がして。
きっと、カスカスで聞こえづらかったと思う。
そんな声で、〝赤坂 優茉〟と伝えた。
「へぇ、ユウマちゃんか。よろしくね」
そのよろしくねが怖いんですけど……!
もう帰りたい。帰りたいです、先輩。
「じゃあ、ユウマちゃん。ちょっと、はっくん借りるね?すぐ返すから」
「あっ、ちょ……!待ってて、待っててね!」
私は二回頷いた。