甘々王子に懐かれた!?
「八田先輩が優茉に懐いたのって、いつからだっけ?というか、なんでだっけ?」
今は、昼食時間。
幸とは同じクラスで、いつも席を向かい合わせにして食べている。
「高校入って、一ヶ月後くらいだったかな」
そう。あの先輩が私に近づいてきたのは、今から二ヶ月前だった。
『みーっけ!』
無邪気な笑顔で、私を指さしたのだ。
あの時の私は何事かと顔をしかめっ面にしたのを覚えている。
学校から出ようとした、その寸前で言われたのだ。
『俺は、三年の八田 慎助。君の名前は、アカサカ ユウマ?』
先輩の名前は、聞く前から知っていた。
学校一のモテ男なわけだから、嫌でも耳に入ってきていた。
なぜ、そんな彼が私の名前を知っているのだろうか。
まぁ、名前の一つくらい知ってる時もあるか、なんて軽く考えた。
『ずっと気になってたんだ、君の漢字。 なんて書くの?』
その時の私は、先輩が甘々なことを知らなかったし、鬱陶しいことも知らなかった。
だから、丁寧に紙を取り出し、ペンを取り出し、書いてあげたのだ。
〝赤坂 優茉〟と。
『ユウマだけでも可愛いのに、優茉ちゃんって漢字まで可愛いんだね。 君、おれのターゲットだから。よろしくね』
今思い返せば、ターゲットって超上からじゃん。
あの時、無視していたらこんなことにはならなかっただろうなぁ。
「八田先輩は、なんで優茉に懐いたんだっけ?」
「懐くって……。それが分かんないの」
「だって、八田先輩、優茉と話してる時犬みたいなんだもん。分かんないの?って、分かってたら、私に言ってるかぁ」
そう、あの先輩は急に私のところに来たのだ。
なんの前触れもなく。