甘々王子に懐かれた!?
「……先輩のこと、嫌いじゃなくなったかも」
「そうなの?なにかきっかけでもあって?」
幸は詰め寄るのをやめ、私に席に座るように促す。
幸は前の席の子の椅子を借り、椅子に跨って私の顔をしたから覗き込んできた。
「いや、特にないんだけど……。でも、イジメ的なの止めてくれた時は先輩のこと見直したかな」
「おお……。前はあんなに甘すぎて鬱陶しいとか言ってたのにね」
そうなのだ。
前は鬱陶しいだけの邪魔者だったのに。
容姿完璧の見た目だけかっこいいとか奴に対する神様からの、なけなしのプレゼントだと思ってたのに!
それが……、今ではそこに魅力を感じ始めるなんて。
自分のばかばかばか!
「でも、初めはあんなに寄ってきてたのに今はなくなったねー?」
「確かにね。もしかして、それが原因で先輩を嫌いじゃなくなったのか――――」
私の言葉はドアの効果音によって消された。
バーン!と派手な音を立てて、皆の注目を浴びて、私を見つけるとへにゃりと顔を変える奴。
ああ、夏休み明けの私の大事な一日目が……。
「優茉ちゃーん!久しぶりだねー、会いたかったよ」
両手を広げて、後ろに花を咲かせて走ってくる先輩に私は全力で逃げる。
適当な幸の応援を受け取って、とりあえず教室から出そうと廊下に出る。
「お久しぶりです、先輩。来てもらって早々悪いのですが、帰っていただけませんかね」
「えぇ、なんで?」