甘々王子に懐かれた!?
なんで、私のところなんかに……。
「まぁ、優茉を選ぶってことは八田先輩、見る目あるよ」
「私なんかを選ぶとか、ある意味すごいよ。先輩の目が心配だね」
「ある意味じゃなくて、凄いの。私、男だったら、絶対優茉選ぶしー」
こうも直球で言われると、照れるよ。
ありがとう、とぎこちなく言うと、幸はそこがまたいい!とかなんとか言って、悶えていた。
絶対、私なんかより幸のほうがいいと思うんだけどなぁ。
――――――
先生の話が終わり、帰り支度をしていた途中、事件は起きた。
そう、これまで、あの先輩は私の教室には来なかった。
これは、彼なりに気遣ってくれているのかと思っていたのだが、それは思い違いだったようだ。
「ちょっと!なんで王子がここに?」
「きゃーっ、王子だ!」
女子が教室の後ろの扉を見て騒ぎ始めた。
〝王子〟と言って。
この学校に王子と呼ばれる人はたった一人だけ。
そのたった一人は、今朝一緒にいた人物。
「優茉ちゃんいる?」
私の学校生活、終わりました。
「優茉?先輩が呼んでるけど……、大丈夫?」
「ああ、うん、呼んでるね」
幸の〝大丈夫?〟は何に対してなのか。
それを考えようとしても、目の前にいる人物に全てが持っていかれて考えられない。