甘々王子に懐かれた!?
元カノである芹香は、俺の誕生日は知っている。
だから、来たんだろう。優茉ちゃんの誕生日をお祝いする、という俺の目的を阻むわけじゃなく。
でも、結果的にお祝いできなくなったわけだ。
俺は、非常に怒っている。なんで今日という特別な日に優茉ちゃんが隣にいないの?
優茉ちゃんが恋しいよ……。
「じゃっじゃーん!ここのお店を予約したんだよ?凄くない?褒めてよ」
着いた場所は、高級レストラン。
ここらで人気のレストランだ。中でも、ステーキが美味しいのだとか。
そんな凄いところをなぜ元カレの立場である、俺にプレゼントするんだ。
分からない。芹香が分からない。
「凄いね」
凄いとは思う。
でも、それよりも教室で待っていてと言った俺がこんな場所にいるのが悔しくて。
優茉ちゃんを待たせてしまっているということが嫌で。
目の前のことなんか全然頭に入ってこない。
「……全然心こもってないじゃん」
まーいいけど、と芹香は俺の手を引いて店内に入った。
一人の男性がこちらに来て、芹香がなにか喋っている。
優茉ちゃん、優茉ちゃん。
俺はお祝いしたかったよ。
会いたいな……、少しでいい。一分でもいい。
優茉ちゃんの顔を見て、お誕生日おめでとうって言いたい。
……ああ、欲を言うなら、お誕生日おめでとうって言われたい。
優茉ちゃんは俺の誕生日を知らないから、無理な話だけど……。