甘々王子に懐かれた!?
なんでもいい。今はただ、あの間抜けヅラのバカ先輩に会いたい。
「先輩っ」
先輩の振り向く速さは異常なのに、セリカさんはもっと上だった。
そこにいたセリカさんは、以前あった時のセリカさんとは別人のように感じるほど怖い。
「ユウマちゃんじゃない、久しぶり」
この久しぶりは、友達がいう久しぶり、親戚がいう久しぶりとはまた別の類のものだ。
こんな恐ろしい久しぶりを私は初めて聞いた。
「お、お久しぶりです、セリカさん」
私は、勝手に意地の張り合いを始めて、セリカさんに震える声で挨拶する。
セリカさんはクスリと小さく笑みをこぼした。
「先輩、あの――――」
セリカさんの存在を無視して、先輩と話そうとすると、セリカさんの声によって遮られた。
「ユウマちゃん。あのね、はっくんに気安く話しかけないでもらえる?はっくんはね、今日、私の彼氏になったの。嬉しいわぁ」
〝私の彼氏になったの〟
セリカさんのその部分だけが頭の中で何度もリピートされる。
どういうこと?ねぇ、嘘だと言って。
きつい嘘?先輩、先輩。先輩……!
どうか、嘘だと――――。
「ね、はっくん」
嘘だと、
「……あぁ」
言ってよ――――。