雨よりも静かな音の中『短編』
ひとひとと…
秋から冬にかけて降る…通り雨を時雨という。

日本人は、風流を好む為か…季節ごとの雨に、名前をつけやがる。

五月雨とかさ…。



春夏秋冬。

移り変わる季節が、人々の心に変化を与え、飽きさせない。

そうだろうか。

季節なんて……

なくてもいい。

季節があるから……変化があるから、思い出す。

ただ過ぎ去る時だけなら、どんなに楽だろうか。


何度目かの…突然の時雨に濡らされて…俺はふと足を止めた。

この季節だったな。


人はあまりにも悲しいことは、忘れるらしい。

だけど、悔しさはどうなんだ。

後悔という悲しさは…。


激しい雨と乾いた音…薄暗い部屋と、

確かだった鼓動の温もりとともに…俺は思い出す。


時雨の季節。

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