このままでいたいから
あの日から先輩とのやり取りは始まった。

話していて、気が付いたことがあった。
お互い、不器用な生き方をしてきていたという事。
お互い、過去のレッテルから逃れようと必死な事。
お互い、色々抱え込むタイプである事。
そしてそれを誰かに吐き出せない事。

誰かが近くにいないと、きっとこの人は消えてしまうと思った時。
私は初めて恋を自覚した。

もし、隣を歩く人が私以外の人だったら?
もし、私が隣にいることを許されなかったら?

意味もなく、辛くて、苦しくて。
見えない先輩の隣に居られる人に黒い感情を感じて。
あぁ、でもこれが恋なんだって。嫉妬なんだって。

そんな中、私は一つの思いに辿り着いた。

今のままなら、ほんの少しだけでも隣に居られるかもしれない。

そんな思いは静かに私を苦しめた。
< 4 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop