恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
じわ、と口の中に甘さが広がるほどに恥ずかしくて、耳がじんじん火照りはじめる。
「おいしい?」
ちらりと目線だけ東屋さんに向けると、やっぱりにやにや意地悪い顔だった。
「おいひいれふ!」
ぷいっと窓の外を向いて、飴玉を含んだまま悔しくて歯を噛みしめる。
あああ!
もう、意地悪だけど好き!
悔しいわ大好きだわ腹が立つだわと、忙しい自分の感情に振り回されていると。
ふと、窓ガラスに、東屋さんの顔が映っているのが見えた。
どくん、と大きく心臓が跳ねて、それから止まってしまったように感じて目が離せなくなる。
東屋さんは、窓に自分が映ってることに気づいてないんだろう。
彼の目が私を見ていて、意地悪に片頬を上げた嫌味笑いから、ゆっくりと表情が変化する。
とても優しい、苦笑い。
多分、ほんの数秒のこと。
それを見た途端、胸の奥が酷く締め付けられて、また涙が出てしまいそうで私もそのまま振り向けなくなった。
私が窓越しに見ていることにも気づかないまま、東屋さんはやがて顔を反らせて反対側の窓を向く。
口の中で飴玉が蕩けるたびに、胸の奥も熱くなるようで。
どうしよう。
毎日、好きになっていくばっかりで、息苦しい。
自分の気持ちでいつか溺れて死んでしまいそうだと、真剣に思った。