恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
その時、窓の外をさーっと横切った看板が目に入った。
「あ、あれ!」
「え?」
「あれ行きたいです今のやつ!」
「だから何」
「イチゴ狩り!」
そう、行き道にもところどころに看板があって、ちょっと気になっていた。
その看板が農園ごとにいくつか並んでいて、今、最後の看板が目の前を通過……。
「あああ通りすぎちゃったあ!」
「当たり前だろ有料走ってんだから!」
未練がましく窓にかじりついて外を見ていると。
「すぐに出口あるから、まだそんな遠くは離れてないだろ」
そんな言葉と同時に、車がすーっと左端に車線変更した。
「え……いいんですか?」
「ナビあるしなんとかなる。ネットで検索してイチゴ狩りやってるとこ探せよ、早く」
「え、あ! はい!」
言われるままに、慌てて携帯で地名とイチゴ狩りで検索する。
え、いいの?
ほんとにいいの?
イチゴ狩り?
ぱらぱらと上がった農園のサイトにアクセスしながら、脳内はすっかり舞い上がってしまった。
下道に下りて車を元来た方向に走らせているうちに、予約なしでも受け付けてくれそうな農園に電話をかけてみたら即OK。
それほど車を走らせることもなく、目当ての農園を見つけた。
「美味しそう……それに可愛いっ!」
受付をして透明のパックと摘みハサミを一つずつ渡され、ビニールハウスに入ると腰の高さくらいにベンチアップされたプランターが並ぶ。
そこから真赤でキラキラしたイチゴがずらっとぶら下がっていた。
「へー、今のイチゴ狩りってこんなんなんだ。子供の時以来だな」
「私もです! なつかしー」
ビニールハウスの端から端に、三つほどの列を作ってあり、間を通ってイチゴが摘めるようになっている。
半透明のビニールハウスは陽射しも通してすごく明るくて少し蒸し暑いけど、風が通って心地よかった。