恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「あ、そう言えば東屋さんってイチゴ好きなんですか」
「……ここまで来て今更聞く? まあ、嫌いでもないけど特に」
「たくさんありすぎてどれに手を出せばいいやら迷います!」
「列ごとに種類が違うって言ってただろ。とりあえず端から順に」
「あ、赤くなってないのはダメなんですよ!」
「わかってるってうるさいな、お前テンション高すぎ」
二人で少し屈んで、イチゴを物色してまずは一つ、その場で味見。
「甘い、美味しい!」
イチゴは美味しいし可愛いし、東屋さんは優しくて。
どうしよう、幸せ過ぎて明日死んじゃうかもしれない。
パックに山盛り取れるだけ取って、ハウスの隅に設置されたテーブルに二人で座った。
「一花、あれ欲しいんじゃないの」
「え?」
指差された方を見ると、女の子の二人組が小さな容器に入ったチョコレートフォンデュをイチゴに付けて食べていた。
コンデンスミルクは無料だけど、あれは多分売ってあるやつだ。
「あ、美味しそう」
思わず素直に答えてしまうと、「ん」と短い返事があって、そのまま出店の方へ歩いていってしまう。
戻ってきた彼の手には、チョコフォンデュの容器が一つ。
ほわん、と夢見心地で東屋さんを見上げてしまう。
「何? どうしたの」
「あ、東屋さんが優しすぎて怖いです」
「どういう意味だ」
どういう意味も何も、こんなに嬉しいことばかり一気に起きたら、後はもう悪いことしか起こらない気がしてしまうじゃないですか!