恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「わかった。コレいらないんだな」
「ええっ?! いりますよチョコフォンデュ! なんで!」
「優しいのは怖いそうだから。欲しいなら買ってくれば」
「そんなぁ!」
東屋さんが怖いって意味じゃないのに!
向かい合わせに座って、目の前にあるプラスチック容器に入ったチョコレートを諦めきれずガン見していると。
やっぱりだ、ほんのちょっと大人しく待っていれば、そうしてくれると思ってた。
大きな手が、すぃっと容器を私の方へ押し出してくれる。
「……冗談だよ」
「わかってます」
へら、とつい、顔がふにゃけた。
嬉しい。
こんな、デート気分を味わえるなんて思わなかった。
ふにゃふにゃと緩みっぱなしの私に、東屋さんは呆れ顔だ。
その上、なぜか。
「……その顔やめろ」
「えっ?!」
いきなり、東屋さんにディスられた。
てっきりまた意地悪か冗談なのかと思ったけれど、なんだかそうでも無さそうで、とても複雑な表情で私を見ている。
「な、なんか、変な顔してましたか」
そりゃ、浮かれまくっただらしのない顔だろうなという自覚はあるけども。
ちょっと、浮かれすぎだっただろうか。
さすがに少し恥ずかしくなって、顔が熱くなったけれど。
「変な顔っていうか……」
「なんですか?」
「……まあいいや」
「えっ?! ちょっと、途中で止めないでくださいよ気になる!」
「いいから食べろ。ほら」
「むぐっ」
ぴと、とチョコに浸したイチゴを押し込まれて黙らされた。