恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「もうお腹いっぱいですってば」
「うん、だから最後の一個」
「だったら私の最後の一個は東屋さんが食べてください!」
身体を乗り出して、えい、と手にしたイチゴを東屋さんの口元に押し付けてしまった。
あ、と気付いた時には思った以上に距離が近くて、互いに手にしたイチゴを唇に押し付け合っているといった状況で。
「何アレ。イチャつき過ぎじゃね?」
と、傍から小馬鹿にした声で冷やかされた。
ひぃ!
「すみませんっ!」
恥ずかしくて顔から火が出そうなほどに、熱くなった。
慌てて引込めようとしたのだけど。
「え、」
ぱく、と私のイチゴを東屋さんが、食べた。
指先を、唇が掠めていった。
もぐ、とイチゴを口の中で咀嚼しながら。
「ん」
と、イチゴで唇を突かれる。
俺は食ったんだからお前も食べろ、という意味には違いなく。
だけど、今まで押し込まれていたのと違って、ただ唇に近づけられたそのイチゴを自分から口に入れるのは何やら気恥ずかしい。
催促するようにもう一度イチゴで突かれて、仕方なく東屋さんの顔を見ないようにしながらぱくんと口に含んだ。
恥ずかしい。
たくさん人が居る中で、何ベタベタくっついてるのか、調子に乗って。
いやでもこれ、東屋さんの悪ふざけにも責任が。
そしてその悪ふざけはまだ、止まらなかった。