恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「ごめん、何度か連絡しようと思ったんだけど、ちょっと、しづらくて……もし会えたらと思ってつい、出勤前に寄っちゃった」
「う、うん? 何?」
「けど、インターホン押す勇気がなくて、偶然でも出て来て顔が見れたら思い切りがつくかな、とか悩んでたとこで」
「うん?」
「あ…………、謝りに、来た」
ぎゅ、と眉根を寄せ、苦しそうに表情を歪ませたかと思うと、彼は突然、がばっと勢いよく頭を下げた。
「ごめん、酷いこと言った。仮にも付き合ってた女の子に言う言葉じゃなかったって、ずっと後悔してて」
「ええっ?! ちょっと、頭上げて?!」
「あの時俺、悔しくて腹が立って、つい、」
「や、それは! 当たり前だよ、悪いのは私だし、」
「俺、焦ってたんだよな、ずっと。仕事始まってから会える時間が全然無くなって、すれ違いばっかりだったし」
とりあえずどこかで座って話でも、と思ったのだけど、京介くんはもう仕事に行かなければいけない時間らしくて、私は一度荷物を置いて駅まで彼を送ることにした。
「電話で話は出来ても、紗世ちゃん新しい職場のことすげえ楽しそうに話すし、出てくる職場の男の名前に嫉妬もしてた。だからあの日、歓迎会だから会えないって言われてたのに何度も連絡したりして、無理に会おうとした」
道すがら、歓迎会の夜のことと別れた日のことを話す。
彼は始終、申し訳なさそうにしているけれど、どこか達観したような雰囲気もあって。
「なんか、紗世ちゃんにちゃんと好きな人が出来たような、そんな気がして焦ってたんだよなあ。予感的中だったってことだけど、相手の男に取られたくないとかそんなことばっかり考えてた」
はあ、と溜息を吐きつつ笑って、私を見た。