恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

「ごめん、何度か連絡しようと思ったんだけど、ちょっと、しづらくて……もし会えたらと思ってつい、出勤前に寄っちゃった」

「う、うん? 何?」

「けど、インターホン押す勇気がなくて、偶然でも出て来て顔が見れたら思い切りがつくかな、とか悩んでたとこで」

「うん?」

「あ…………、謝りに、来た」


ぎゅ、と眉根を寄せ、苦しそうに表情を歪ませたかと思うと、彼は突然、がばっと勢いよく頭を下げた。



「ごめん、酷いこと言った。仮にも付き合ってた女の子に言う言葉じゃなかったって、ずっと後悔してて」

「ええっ?! ちょっと、頭上げて?!」

「あの時俺、悔しくて腹が立って、つい、」

「や、それは! 当たり前だよ、悪いのは私だし、」

「俺、焦ってたんだよな、ずっと。仕事始まってから会える時間が全然無くなって、すれ違いばっかりだったし」



とりあえずどこかで座って話でも、と思ったのだけど、京介くんはもう仕事に行かなければいけない時間らしくて、私は一度荷物を置いて駅まで彼を送ることにした。


「電話で話は出来ても、紗世ちゃん新しい職場のことすげえ楽しそうに話すし、出てくる職場の男の名前に嫉妬もしてた。だからあの日、歓迎会だから会えないって言われてたのに何度も連絡したりして、無理に会おうとした」


道すがら、歓迎会の夜のことと別れた日のことを話す。
彼は始終、申し訳なさそうにしているけれど、どこか達観したような雰囲気もあって。


「なんか、紗世ちゃんにちゃんと好きな人が出来たような、そんな気がして焦ってたんだよなあ。予感的中だったってことだけど、相手の男に取られたくないとかそんなことばっかり考えてた」


はあ、と溜息を吐きつつ笑って、私を見た。

< 125 / 310 >

この作品をシェア

pagetop