恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

「さっきの人がそう?」

「え?」

「今、車で帰ってきたの見た」

「あ、うん、そう。一緒に出張で今帰って来たとこで」

「まだ新人なのに出張とかあるんだ、大変だね」


聞かれるままについ答えてしまっているけれど、京介くんと別れた理由の人のことを話すのは抵抗がある。
だけど彼は穏やかで、更に続きを知りたがった。


「ちゃんと付き合ってるの? それがちょっと、心配だった。余計なお世話だろうけど」

「え?」

「知り合って間もないし、その……お酒の勢いで、ってだけになってないかなって。紗世ちゃんって、案外スレてないとこあるから簡単に騙されそうで」


きょとん、と彼を見上げ、言われたことの意味を反芻した。
そんな私の反応に、京介くんも不思議そうに首を傾げる。


「えっと……付き合ってないよ?」

「え?」

「そっ、そもそも、あの日は何もなかったんだって! 言わなかった?」

「言ってたけど、言い訳かと思ってた……っていや! 普通信じないだろ!」


若干赤い顔で言い返す私に、京介君も少し顔を赤くしながら、バシッと突っ込みが入った。
確かにその通りだから反論の余地はない。


「じゃあ、告白は?」

「してないし、しないよ!」

「なんで?」

「だって、今はほら、先輩後輩って関係だけで、うん」


傍にいられれば、それで。
だって、東屋さんは西原さんが好きなのだから、その関係でいるしかないじゃないか。

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