恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「あ、いや。ごめん。俺がもう、口出すことじゃないよな」
「あ……ううん、そんなことない。ありがとう。心配してくれて、それと、謝りに来てくれて」
話してる間にも歩は進んでいて、ちょうど駅前に着いたところだ。
駅入り口の少し隅の方で、一度立ち止まった。
「大学の仲間内で、また会うこともあるだろうし……その時にお互い、遠慮したくはなかったし、さ」
「うん、そうだね」
「共通の友達まで疎遠しないといけないような、後味悪い別れ方にしたくなかったから」
「うん……ありがとう、ほんとに」
じゃあ、と。
話の途中ではあるけれど、これで見送るつもりで手を振ろうとした。
でも京介くんは、まだ何かを言いたげに立ち止まったままだった。
「京介くん?」
「さっきの話。余計なことだとはわかってんだけどさ」
言うべきか迷っているのか言いづらいのか、彼は頭を掻きながら、だった。
「好きなら、そんな、いつまでも無欲ではいられないと思う。俺が紗世ちゃんに、そうだったように」
「え、」
「あの日さあ、紗世ちゃんの好きなお菓子買いながら、紗世ちゃんが俺とやり直したいって思っててくれてたら、許そうって。そう思ってたのも本当だよ。だけど」
彼は一拍置いて、唾を飲む。
目を逸らしながら、気まずそうに早口で言い放った。
「それができるかどうかは、自信なかった。めちゃくちゃ腹も立ってたし、嫉妬にも狂ってた。それでも、俺が何喰わぬ顔でいれば紗世ちゃんが本当は別れたくても言い出せなくなるかもしれないとか、姑息な計算してしまうほど執着してたし、今なら罪悪感で俺にも身体許すかもって、下心があったのも全部本当」
「……京介くん、」
「そういうもんだよ。綺麗なままで続けるのは難しいよ、ましてや、片想いをさ」