恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
駅から家まで歩きながら、京介くんに言われたことが頭から離れなかった。
『無欲のままではいられない』
わかってるよ。
わかってるから、一生懸命ブレーキをかけようと思ってる。
家に着いて、玄関に放りっぱなしだった荷物を整理していて、ふと気が付いた。
東屋さんに買ってもらったチャームが、どこにもない。
鞄をひっくり返して全部中身を床に散らかしても、出てこない。
「あれ? なんで……どこ?」
泣きそうになりながら、懸命に記憶を辿る。
買ってもらってそれから、鞄に入れた?
入れてない。
そうだ、嬉しくてずっと膝の上で弄ってて、いつの間にか眠ってた。
だとしたら、降りた時に落としたのかもしれない。
外に飛び出して、車を降りた辺りを探した。
グレーチングの溝の中まで覗いても、どこにも見当たらない。
「どうしよう……」
大事な、思い出の記念。
簡単に諦められるものではなくて、再び家に戻って携帯を取ると、東屋さんの番号を発信した。
『一花? どうかした?』
電話はすぐに繋がって、さっき別れたばかりなのにと訝しむ声が聞こえた。
「すみません。まだ車の中ですか?」
『いや、もう家だけど』
「あ、あの……イチゴのチャーム、助手席に落ちてなかったですか」
折角買ってもらったものをなくしたなんて、とても申し訳なくて言いづらかったけれど。
今、思いつく可能性と言えば助手席の足元しかなかった。