恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
あなたの心を揺さぶるものは
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月曜の朝、やっぱり諦めきれなくて東屋さんと乗った社用車の中を覗きに行ったけど、チャームは見つからなかった。


無くしてしまったものは仕方ない。
思い出はちゃんと私の中にあるのだからと、気を取り直す。
そして実際、いつまでも落ち込んでいる場合でもなかった。


本部長に、東屋さんが名指しで呼び出された。


もしかして、春日住建のことだろうか。
だとしたら、私も行くべき?


だけど呼ばれもしないものを、簡単に首を突っ込むわけにも行かない。
迷いながら目で追っていると、営業部を出る寸前、東屋さんがくるっと私の方を振り向いた。


ぱち、と目が合う、数秒後。


思いきり意地悪な顔で、べっ、と舌を出された。


し、心配してるのに!


余計なお世話だと言いたげな態度に呆気に取られているうちに、同じ階の最奥にある本部長室に消える。
それから少しして、今度は藤堂部長まで後を追って入って行った。


間違いない。
絶対春日住建、というより田倉さんの一件だ、と確信する。


田倉さんが、何か言ってきたのだろうか。
契約破棄とかなら、どうしよう。


っていうか、どうして私が蚊帳の外なの?


私が行って、どうなるものでもないのかもしれないけど、せめて東屋さんは私を助けてくれたんだとそれだけは主張したい。
意を決して立ち上がった時、その手を横から掴まれた。


「一花さん、ごめんね。ちょっと資料集め手伝ってくれる?」

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